ご飯はみんなで食べましょう

 

 

 

 

 

10月16日

 

 

 

 

テントの中で目が覚めて

時間を確認しようとおもむろにスマホの画面を眺めた

 

 

時刻は5:04

 

 

いつも通りか

 

 

 

 

ロングトレイルを歩き始めて数週間経てば

歩くことを中心とした生活リズムが形成される

 

 

 

 

時刻が表示されている画面には

不在着信とメッセージの通知が表示されていた

 

「まさるくんごめんね〜着くの遅くなっちゃったから近くのコンビニで待ってるね〜」

 

受信した時間は深夜0時

 

僕はもちろん夢の中だった

 

 

 

 

 

メッセージの送り主はチェリーことのぞみさん

彼は2018年に PCTをスルーハイクしたハイカーだ

 

彼の住んでいる場所は新潟県

わざわざ車を走らせて会いに来てくれたのだ

 

再開するのは半年ぶりぐらいだろうか

 

 

いつまでたっても友達っていいなと思う

 

「おはよ〜!今から1時間ぐらい歩いたらコンビニ着くと思うよ!」

 

と返信を入れてテントから出た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パパッとパッキングを済ませ

 

 

のぞみさんが待つ

ファミリーマート高田米崎町店へ向かった

 

 

箱根山から下る足並みは

いつもより浮かれている

 

 

 

 

早く会いたい

 

 

あのふわっとした

大きな猫みたいな

大好きなのぞみさんに

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間ほど歩くと県道38号線に合流し

その道を右折しファミリーマートへ向かう

 

 

左手には畑がありその奥には太平洋が広がっている

右手には寝泊まりしていた箱根山が見える

 

 

歩道を歩いていると

遠目にファミリーマートの看板が見え始めた

 

 

友達との再開はなぜこんなに心が踊るのだろう?

 

 

 

 

そんなことを思いながら歩いていると

 

 

 

 

 

 

 

 

対向車線を走る車から

 

「お〜〜〜い!まさるく〜〜〜ん!」

 

 

と声が聞こえた

 

のぞみさんだ!

 

 

 

 

コンビニで待ちきれず逆走してくれていたのだろう

 

 

 

コンビニはすぐそこだ

 

「コンビニで合流しよーー!」

 

と伝えると彼は車をUターンさせ

 

 

来た道を戻っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「のぞみさんおはよーーー!」

 

「まさるくんおはよ〜〜〜」

 

コンビニで再会した彼は目をこすりながら車から降りてきた

 

「コンビニで待っててくれたらよかったのに」

 

「コンビニ集合って言ってたっけ?」

 

「メッセージ送りましたよ」

 

「あれそうだっけ?」

 

どうやら携帯を見ていなかったらしい

 

なんだ。早く会いたかったわけじゃないのか

 

 

 

 

 

久しぶりの再会だからといって

特別テンションが上がるような人ではない

 

 

昨日会ったばかりだったかな

と思わせる彼の接し方が

僕は結構好きだったりする

 

 

「とりあえずコーヒーでも飲もっか」

 

ファミマのホットコーヒーを買い

地元のコンビニにたまる若者のように朝の時間を過ごした

 

 

 

 

 

「これからどうします?」

 

「何でもい〜よ。一応バックパックは持ってきたからどこでも寝れるよ」

 

「え!歩くんすか?」

 

「歩けるけど、歩きたくないな。だって車あるじゃん!」

 

「ですよね。どーしよ」

 

「なんでもい〜んじゃない」

 

 

 

そう、僕たちは「会う」こと以外何も決めていなかったのだ

 

 

 

「とりあえずせっかく東北きたんだし美味しいご飯食べたいね」

 

というのぞみさんの一言で

とりあえず道の駅山田へ向かうことだけは決まった

 

 

 

 

 

数日かけて歩いてきた道も車移動だと

数時間で戻ってこれてしまう

 

 

この時ばかりは

歩く移動の遅さと

驚異的な文明の力を目の当たりにさせられる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

道の駅山田に到着したのは8:39

 

オープン時間までまだ1時間もある

 

 

 

 

 

 

とりあえず車から降りてベンチに腰掛けてみる

 

「あ!そうだ。これお土産」

 

とのぞみさんが和菓子を差し出してくれた

 

 

 

それをほうばりながらオープンを待った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日どうします?」

 

「そーだね。どうしよっか」

 

 

 

 

 

いつまでたっても何も決まらない

 

 

 

 

 

「そや!シゲさんが後ろ歩いてるから捕まえに行きます?」

 

シゲさんは僕がアメリカで出会ったハイカー

2017年PCT・2018年ATを共に歩いた友達だ

のぞみさんとシゲさんも交友関係があり

毎年東京で開かれるロングトレイルのイベントの際

喫煙所に溜まるのは大体この3人だ

 

「あぁそれい〜ね」

 

「多分、今船越半島歩いてるはずやから、今日中にはこの辺通るんちゃいますかね?」

 

「じゃぁ決まりだね。合流してから一緒にお昼食べに行こっか」

 

 

 

とりあえずシゲさんを捕まえてご飯に行くことだけは決まった

 

・・・それ以外は何も決まっていない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シゲさんに連絡すると

10時頃には道の駅山田の近くを通ると言っている

 

 

 

 

そうこうしていると

道の駅がオープン時間になっていた

 

ずらりと陳列されている松茸をみて

 

「この松茸やばくない!!めっちゃ安いじゃん!!やばくない!?」

 

のぞみさんのテンションは再会の瞬間よりはるかに上がっている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻は9:55

 

 

僕とのぞみさんは山田南IC付近でシゲさんが歩いてくるのを待っていた

 

「エンジェルってこんな気持ちなのか?」

 

「そうなんですかね?」

 

「あの人たち本当よくやってくれるよね」

 

 

 

 

 

10分ほど経った頃に

シゲさんがテクテク歩いてきた

 

 

「まさかここに現れるとは」

 

ニコニコ歩いてきたシゲさんの第一声はそんなだった

3人で会うのは8ヶ月ぶり

シゲさんの表情からは再会を喜ぶ気持ちが見て取れる

 

 

一方のぞみさんの第一声は

「しげさんなんでサンダルなの?」

と不思議そうに足元を眺めていた

 

 

彼はやっぱりいつも通りだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っでこれからなんか決まってんの?」

 

「何も決まってませんよ」

 

「どうしようかね〜」

 

「とりあえずご飯食べにいきます?」

 

 

 

今日は「とりあえず」をよく耳にする一日だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえずご飯を食べに行き

磯ラーメンをすすり

 

さらっと昼食タイムは終わった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時点でこの中の誰一人として歩こうとは思っていなかった違いない

 

となると

今日の寝床を決める流れになる

 

 

一般的な考えなら

温泉宿にいくとか

車で街に行くとか

なのかもしれないが

 

3人が合流できた時点で僕たちの目的は達成されてしまっている

 

 

あとはただ同じ時間を過ごせればなんだっていいわけだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スーパーで食材買ってキャンプ場でBBQでもやればいいんじゃない?」

 

と僕が提案すると

 

「それでいいんじゃない」

 

提案するのがめんどうなのか

2人して賛同した

 

 

まぁいいか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キャンプ場は僕が10日前にお世話になった

根浜キャンプ場に決まった

 

 

 

食材を買い混み

キャンプ場へ向かうと

 

スタッフの方が僕のことを覚えてくれていた

 

根浜キャンプ場のスタッフの皆さんは

みちのく潮風トレイルのハイカーにとても好意的だ

 

ハイカーが立ち寄る場所になればと願っているようだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

BBQセットをレンタルすると

 

「よかったらこれも使ってもらっていいですよ!」

 

キャンプチェアを3脚

テーブル1台

を持ってきてくれた

ハイカーのことをよくわかってくれている

 

嬉しい限りだ

 

 

 

 

 

 

 

 

早速指定されたサイトに車を移動させ

 

とりあえずキャンプチェアを広げてビールを飲み始めてみた

 

 

 

 

時刻は14:00

 

 

 

 

目の前の先輩2人は全く動く気がなく

大仕事を終えたかのように深く椅子に腰掛けている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだった

 

この3人でいる時は僕が動かないと何も始まらないんだった

 

 

 

まぁいいか

 

 

 

 

 

 

 

 

BBQセットを準備し始めると

 

「まさるくんそんなに急がなくてもい〜じゃ〜ん」

 

とのぞみさんがゆるく声を発した

 

「でも、僕やらんかったら誰もやらないでしょ笑」

 

「まぁそれもそうだね」

 

しげさんは隣でその光景を眺めてニコニコしている

 

 

 

 

 

 

 

「笑ってんとうごきーや」

 

「誰かやらんかった始まらへんやん」

 

「ほんま人任せやな」

 

 

 

 

 

そんなことは微塵も思わない

 

 

 

 

 

 

 

それは僕がこの2人を慕っているからなんだと思う

2人がどう思っているかはわからないが

 

悪い気がしないから別にいいかと思わせてくれる

 

 

 

 

 

そんなやりとりが

 

今日も平和だな〜と

 

しみじみ感じさせてくれる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういや、ホタテ買ったよね!!」

 

「2枚入りを2パック買いましたよ」

 

「それから焼こうよ!」

 

「おっ!メインからいっちゃいますか!」

 

 

 

殻付きのホタテをパックから取り出し

網の上に4枚並べる

 

「殻付きのホタテって勝手に開くんですかね?」

 

「そうじゃないの?」

 

「まぁとりあえず待ってればいいでしょ」

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後

 

パカッ

 

と殻が開き

なんとも言えない磯の香りが漂った

 

 

 

「ホタテといえばバター醤油ですよね」

 

「ちゃんと買ったから袋に入ってるはずだよ」

 

袋からバターと醤油を取り出した

 

「いいね〜いいね〜」

 

と2人が声を合わせて

ようやく椅子から立ち上がった

 

 

 

 

 

 

 

バターをのせその上に醤油をたらす

 

溢れた醤油が貝殻から滴り

真っ赤にいこった炭の上に着地した

じゅわーという音ともに

醤油の焦げる香りと磯の香りが混ざり

バターの甘い香りがほのかにアクセントをつける

 

 

 

 

 

 

 

さぁもう食べごろだ

 

 

 

 

「誰から行きます?」

 

「そりゃ年長のシゲさんからいってくださいよ〜〜」

 

とのぞみさんがシゲさんを指名した

 

「えっいいの〜!!」

 

と言いつつすで割り箸を持ち食べる気満々でヨダレを垂らしている

 

 

「熱そうだね」

 

「汁もいきたいですよね〜」

 

動画を撮る僕の前で2人がイチャイチャし始めた

 

「俺が殻持って汁吸わせてあげますよ」

 

「いやそれは怖すぎるでしょ。自分で食べるよ」

 

 

「いってらっしゃい!!」

 

 

 

 

 

 

 

うわぁぁ〜〜

 

うまそ〜〜

 

う〜〜

 

 

 

やば!うま!!!うま!!!!

 

 

 

そんなことは全員知っているのに

なぜ人は「うまい」といってしまうのだろう

 

 

 

 

 

 

 

のぞみさんもあとに続く

 

うわぁ〜〜

 

やばいね〜〜これ

 

緊張して食べれないっすね〜

 

 

 

熱々のホタテを一口で放り込んだ

 

 

 

どうどう?

 

 

 

やばい、、、うますぎる

 

 

 

 

 

 

 

うまいとわかっていても

「うまい」と言わざるを得ないのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつけば太陽は山並みに隠れていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひとしきりBBQが終わる頃

この上ない幸せな空気がキャンプサイトには漂っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

のぞみさんが食べ散らかしたBBQセットを目の前に

 

そっと一言

 

「ホタテがうまかったのかバター醤油がうまかったのかわからないね」

 

 

 

 

 

 

 

 

こうしてとりあえずでいきついた根浜キャンプ場での夜はふけていった

 

 

 

 

 

 

やっぱり友達っていいな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回 みちのく潮風トレイル Episode5

タイトル「         」

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