泥付き赤ワイン

10月31日に福島県・松川浦にたどり着くことができた

37日間の旅の終着地点だ

みちのく潮風トレイルを歩ききれたことをここに書いておこう

僕は今、大阪から千葉県・保田駅まで向かう新幹線の中にいる

旅が終わってから1ヶ月も経たない間に4度目の新幹線に乗ってしまている

金銭的にかなりの余裕があるわけでもないのに、、、

先が思いやられる、、、

旅が終わるといつもお金は減っている

なんせ旅の間は収入が途絶えてしまうからだ

まぁ当たり前のことだ

そんなことと付き合い始めて

8年目に突入しようとしている

「なれたもんだ!」と言いたいところだが

いつも旅を終えてからの1・2ヶ月はなんとか生き延びている状態だ

お金との付き合い方は

神からの試練とでも言っておこう

では、時間を50日ほど戻して

「みちのく潮風トレイル  Episode1」

を記していこう

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吉祥寺のトイレ前で恥ずかしい思いをしたことは忘れて

僕は八戸駅からみちのく潮風トレイル(MCT)の北端がある蕪島へ向かっていた

結膜炎になっていなければ

「5日前にここを出発していたんだな」

と思いながら夏の光が残る太陽が照らす

蕪嶋神社を眺めていた

GO TOトラベルの関係もあってか

コロナ禍であるとは思えないほど

たくさんの観光客が蕪嶋神社に訪れていた

誰一人としてバックパックを担ぎ

トレッキングポールを持っている人はいなかった

同じ場所にいるはずなのに

まるで違う時間軸が何かのいたずらで交わってしまったようだ

そういえば、数日前

トレ研のYouTubeに出演していたナカジがこんなことを言っていた

「ハイカーって周回遅れ感が半端ない」

とてもしっくりくる言い回しだ

そう、、、恐らくハイカーは周回遅れに気づかずに

ゆっくりと流れる時間や

誰も気に留めない忘れ去られそうな時間に

浸って気持ちよくなる生き物なのかもしれない

12時31分

ベンチで腰をかけている僕に手を振る男が一人遠くに見える

どうやら彼も周回遅れ組のようだ

Takeya Tsunokawa(たけさん)
年齢:40前後
ハイク経歴:MCT2019・AT section hike × ?
アメリカ滞在中、住まいの裏山的なところを登っていると、小さなカバンを背負い高速で山の中を歩くハイカーという生き物に出会い、ロングトレイルの存在を知り、帰国後休暇を利用し30日前後でMCT 1025kmを踏破。1ヶ月のMCTの資金は5万円と荷物も資金もミニマムな機動性抜群のハイカーだ。僕がMCTを歩く中、仕事の休みを利用し青森県むつ市から車を飛ばして2度ほど共に歩いてくれた

「君も周回遅れなんだ!いい感じだね!」

と言わんばかりに初めましての挨拶をかわす

僕とたけさんは今日が初対面だ

以前からSNSで連絡を取り合って

どこかのセクションで一緒に会いましょう!

と言っていたのだ

とりあえずバックパックを背負って

歩き始めた

1000kmを越える旅の始まりは

友達とコンビニに行くような自然なものだった

彼のハイキングスタイルが構築されたのは

言うまでもなくアメリカのアパラチアントレイルだ

軽量のバックパックで

ランニングシューズのような靴を履き

短パンに柄シャツ

頭にはキャップ

そしておしゃべりで

時たま流暢な英語が挟まれる

「What’s up!! What’s up!!」

アメリカ育ちの彼とのハイクはアメリカのトレイルそのものだった

違うことは日本語という言葉を使っていることだけだろう

ある日

台風14号が東北に接近しているというのに

僕たち2人は誰もいない県道268号を歩いていた

波は荒れている

こんなに荒れている海を見るのは初めてだ

太平洋側から強風が打ち付け

左耳は風の音に支配され

体の左半分だけが濡れている

もしこの瞬間を一人で歩いていたら

ただの苦行でしかない

「街で休むべきだった」

「なんでこんな日に」

「早く風呂に入りたい」

そんな感情が湧き上がってくる

だが誰かと歩いているとまた違った感情が滲み出てくる

何より歩いている人がいるという事実が

僕に力をくれるんだろう

「さすがたけさんアメリカ仕込みで前向きやな〜」

と驚きと関心を彼に抱きながら元気をもらっていた

後々話をすると、、、

「トリプルクラウナーはこんな日でも歩くのか!」

とたけさんも驚いていたらしい

お互いが勝手に相手を祭り上げ

くじけそうな心の支えにしていたようだ

県道268号線は小袖港で内陸へ右折している

トレイルは直進しろと言っている

普段なら嬉しい舗装路から自然の中への分岐も

この瞬間だけは268号線にしがみついていたかった

この大荒れの昼下がりに山の中に消えていく人を

地元の人が見ればどう思うのだろう

リアス式海岸の沿岸にビーチはほとんどなく

断崖絶壁の崖ハイクが始まる

崖を壊してしまいそうな波の音

木々をすり抜けて体にぶちあたる風

小刻みの急登急降下に加え

雨で浮き上がった腐葉土が足を不自由にする

内側から吹き出す汗と

外側から打ち付ける雨

雨風をしのげる場所も平らな地面も見当たらない

ハイキングとは過酷なものだな。

僕たちは会話一つせずに

黙々と歩き続けていた

どこまで行くとも決めていない

どこで寝るとも決めていないのに

なぜ僕たちは歩いているんだろう

そもそも今日はテントを張れる場所があるのだろうか

時間は16時を過ぎた頃だったはず

少し不安になりかけている時に

タ「マサルくん!去年俺が歩いた時にもうちょっと先で寝たからそこでテント張れるはずだよ!」

マ「まじですか!とりあえずそこまでいけますかね?」

タ「ちょっと地図見てみよ!   確かこの辺やったかな」

マ「ここ等高線見る限り平らなとこなさそうっすよ」

タ「確かにね。俺ほとんど過去の記憶ないからね」

マ「まじですか。。。」

言われてみれば

一緒にMCTを歩いている数日間

たけさんは去年スルーハイクしたとは思えないほど

出会う景色

出会うトレイル

に初めて見るような感情を見せていた

ほんとうに何も覚えていないのかもしれない

信用してはいけない、、、、、

この人は子供がそのまま大きくなったんだ

そうに違いない

そうに違いない

17:00

そろそろテントを張れる場所を探さないと、、、

するとトレイルの脇に少しだけ轍が残っているような気がした

その轍を進むと昔の林道のような開けた場所に出た

5段階評価で0.5のテント場だが

もう選択肢がない

ここで寝よう

水たまりの上にテントを張るような

そんなエキサイティングな寝床を僕たちは獲得した

「マサルくんワインあるけど飲む?」

テントの中からそんな声が聞こえてきた

誰かと歩くってやっぱりいいな

この夜は雨が降り続け

葉や木々にに打ち付ける雨音と

ゴーゴーと唸りを上げるなんとも言えぬ海の音が

夜の闇を支配していた

その音の正体はタケヤのいびきだったことは

明日の朝彼に伝えよう

次回 みちのく潮風トレイル Episode2

タイトル「         」

お楽しみください!!

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