世界一周中にブラジルで出会った宇部佑一朗と言うヒゲモジャの千葉県民。
彼との出会いで27〜30才までの僕の人生を大きく狂わせた。
彼は2年の年月をかけて、世界を回りながら旅とロングトレイルを歩くという計画で日本を出ていた。
カリフォルニア州からワシントン州まで続くPacific Crest Trail 4265kmのアメリカ縦断。
これが彼の旅に出て一発目の冒険だった。
PCTを歩き終え、南米を旅している最中にばったり僕が出会ってしまったのだ。
出会った場所はブラジル・サンパウロからバスで数時間北上したところにある、ミランドポリスというド田舎の弓場農場。
そこで、彼はPCTでの思い出を
時には思い出に耽る遠い眼差しで
時にはイキイキと子供のように
話してくれた。
僕の中で何か湧き上がるものがあったのか、、、目の前でイキイキ話す彼の見た景色や体験を自分自身で感じたくなってしまった。
道具の知識も
山の知識も
ほとんど一般人程度の僕がよく歩きに行くといいだしたものだ。
登った山と言えば、富士山と実家の近所にある山ぐらい。
それと、ブラジルに来る前にボリビアでナンパされ突撃したワイナポトシ6088m。
あまりにも酷い経験しかない。
「まさるなら歩けるよ!」
と僕の背中を押してくれた彼の言葉にはなんの根拠もなかっただろう。
無責任極まりない愛だ。
そんな愛のお陰でPC行きの準備を着々と進めていた。
アメリカに到着しあまりにも不安になった出発前夜。
不安要素を取り除いてもらおうと彼に電話をかけた。
そんな不安を投げかけた返事は、
「大丈夫。歩けばわかるよ!わからなかったらハイカーと相談すればいいから。俺が全部教えたら面白くないでしょ?」
そんな言葉が返ってきた。
それが2年半前の2017年5月11日
2017年のPCTのシエラネバダ山脈は荒れていた。
冬の間に降った雪が例年の積雪を越え、トレイルは雪で隠され、雪解け水が川に流れ込みかなり危険な渡渉を強いられた。
シエラネバダを抜けると山火事が多発。煙の中を歩く日々が続き、日中の太陽も煙に遮られオレンジ色をしている。
2017年は今までのPCTで一番タフな年だったに違いない。とハイカー達は口を揃えて話していた。
そんなPCTも終わりを迎えようとした頃、、、
ラビットという韓国のハイカーと出会ってしまった。
彼は僕と年齢が同じ、しかも昨年他のトレイルも歩いたという。
Continental Divide Trail。まさに僕が今歩いているトレイルだ。
Appalachian Trail 3500km
Pacific Crest Trail 4265km
Continental Divide Trail 5000km
アメリカ代表する3大トレイルの中でも最も難易度が高いと言われている。
しかし、彼はそのトレイルをほぼ初心者の状態で歩ききってしまったらしい。
そんな彼の影響を受けるのか、受けないのか、葛藤の日々が始まった。
他にもトレイルがあるという事を知って20代で1本を歩くかどうかすごい悩んでいた時期があった。
1本で終わる人生と3本とも歩く人生は、どっちがドラマチックでエキサイティングかと悩みながら歩いているとPCTのゴールが迫ってきた。
2017年9月18日
カナダ国境のゴールが遠目に見えた。
その瞬間、、、「まだ歩きたいな」
ともう一人の僕が囁いた。
帰国後、今後どうしていくのか色々と悩んではいたものの「アメリカ3大トレイル」が心から消えることはなかった。
人生でやってみたいことのトップにトリプルクラウンという言葉が居座り続けていたのだ。
2017年PCT
2018年AT
そして、、、
7月2日から107日かけて歩いてきた3本目のCDTも残り後数日で歩き終えることになる。
今回のCDTでも、本当にいろんな事があった。
険しく美しい山々を見せてくれたモンタナ州
自然の素晴らしさと残酷さを教えてくれたワイオミング州
雪の恐怖に怯えながら駆け抜けたコロラド州
孤独感と開放感を感じながら歩いたニューメキシコ州
そして、何より今回はハイカーとの出会いが特別に濃厚なものになった。
そもそもCDTは歩くハイカーが少ないのと、前回の異常気象とも言われる雪の影響が重なり、通年よりもハイカーは少いだろうとハイカーや宿の人は言っていた。
確かにハイカーは少なかった。
3〜4日人間と会わないなんて日もあった。
そして、パヤと別れた2週間ほど前からCDTハイカーとは会っていない。
トレイルに残された足跡は動物のものばかりだ。
あまりの少なさに寂しさを感じることもあるが、そんな少数のハイカーだからこそ、絆も深まり仲間意識がより芽生えたのだと思う。
思い出を書き出せばきりがない。
Sherry
Rock
Jack Rabbit
Willi
Hey bear
French Fry
At Home
Spice Rock
Canyon
Yukon
Clementine
Legs
Neon
Gnome
Unger Wear
Bamboo
Peacock
Quiet Guy
Maxipe
Flipper
Soda
Sifi
Paya
Popcorn
本当にありがとう。
僕の前を行く、Willi Soda Sifiはもう歩き終わっているに違いない。
Willi は大学にいく準備をし、Soda はLAからロンドンに帰ろうとしている頃だろう。Sifiは次にやる事が見つかっただろうか。
flip-flopで歩いたハイカー達はヒゲを剃り、毎日ベッドで眠っているのだろう。
後ろを歩くSOBOの仲間達は雪で苦労していないだろうか。無事にメキシコ国境まで歩いてもらいたい。
このハイカーの少なさから、メキシコ国境までたどり着く間に恐らく誰とも出会わずに終わりそうだ。
そして、次は僕の番になりそうだ。
そんな3年半前にロングトレイルを知ったばかりの素人が気がつけば、アメリカ3大トレイルを後130kmほどで歩き切ろうとしている。
これを歩き切ると地球の直径ほどの距離になる。
人生は本当にどうなるかわからない。
ブラジルで宇部佑一朗という男に出会っていなかったら、僕は今頃何をしていたのだろう。
少なくとも今のようにアメリカの乾燥地帯で、水を求めて歩いていることはなかったはずだ。
でも、僕は彼に出会えて本当に幸せだ。
つい足を止めてしまう絶景
数え切れないほどのハイカーとの思い出
エンジェル達の暖かく過度なハグ
嗅いだことのない靴下の悪臭
ほぼゴミ状態の使い込まれたジップロック
自分の気づかなかった弱さと強さ
2.5 mile / hour
自然の中での人間の無力さ
命の水ウォーターキャッシュ
男心をくすぐるヌーブラハイカー
km換算ができなくなるmileへの慣れっぷり
Smart waterの使い勝手
桃色の包み込むような暖かさの朝日
みるみる削れていくトレキッグポール
Lone peakの足跡のかわいさ
1週間ぶりのシャワーの爽快感
25¢ラーメンのレギュラーぶり
Wifiが繋がった時の情報の渋滞
日本では行かないマクドナルドの利用率
真夜中に始まる天然のプラネタリウム
ヒゲについたアイスクリーム
雨の日のヒッチハイクの惨めさ
洗っても永遠に綺麗にならない衣服
金額ではなく重さとカロリーを重視する食料
体を駆け巡るコーラの悪魔っぷり
町に着く前日のテントの中でのワクワク感
ゼロの翌日のやる気のなさ
体と同じぐらいのキノコを頬張るリス
ベリーの木によじ登り落ちて逃げていくクマ
一定の距離を取りつつこちらを観察するウシ
体の塩分を舐めにくるマーモット
山の中を自由に走り回るシカやエルク
そして、自分という人間の可能性
こんなに抱きしめたくなるような愛おしい思い出たちと気づきを僕に与えてくれた。
こんな楽しい人生があるんだよ!と教えてくれた。
トリプルクラウンに使ったこの3年間は、いつまでも消えることのない宝物になるに違いない。
サンキュー!
ゆうちゃん!
そろそろ残り85mile行ってきます。
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