ご当地ヒーローに阻まれた昼下がり

with 3件のコメント

 

 

 

9月28日

 

 

普代浜の芝生の上で目が覚めた

海からの風が普代浜に優しくそよぎ

その風は普代川に 沿って内陸に緩やかに流れ込んでる

 

その風のおかげで

テントはさらっと乾いている

少し肌寒い空気の中

ふかふかの寝袋からはなかなかでることができない

 

 

 

太平洋の水平線から昇る太陽が

「そろそろおきなよ!」

と言っている気がして朝食の準備にとりかかった

 

 

 

隣にはタケヤのテント

彼とは今日のハイクでお別れになるだろう

もう1日楽しく歩けそうだ

 

 

普代浜で朝の散歩をしに来たおじさまの犬が

僕たちのテントに遊びにやってきた

 

なぜかタケヤのテントに入ろうと試みている

「汚いおじさんしかいないよ~!」

とタケヤは少し困っている

 

 

 

今日も平和な朝だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日歩くセクションは

北山崎レストハウスに向かい

あとは適当に歩けるだけ歩く予定

 

 

 

 

 

8時頃に歩き始めて

昼過ぎに北山崎展望台にたどり着いた

 

 

展望台からは

断崖絶壁が一望できる

 

その崖からは

大地に降り注いだ雨が水脈となり

長い長い旅を終えて太平洋に飛び込んでいる

 

 

 

そんな場所でタケヤがポツリと話し始めた

 

「去年歩いた時、ここで女の子と話したんだよね」

「そうなんですか」

「なんか一人でここの展望台いてたから話かけたんだよね」

「一人でここくるってなんかあったんすかね?」

「友達とくるはずだったけどキャンセルになっちゃって一人で来たて言ってたよ」

「みちのく歩いてたら若い人と話すだけでレアな思い出ですね笑」

「ほんとだよ。あの子今何してるんだろね?」

 

 

 

 

 

タケヤの旅の思い出よりも僕は腹が減ってる

 

 

 

 

 

 

展望台のすぐ後ろが北山崎レストハウスだ

バックパックを背負いレストハウスへ向かった

 

 

レストハウスの他に

白花シャクナゲ荘と

松乃屋食堂

が3軒並んでいる

 

その中でも白花シャクナゲ荘の磯ラーメンセットが

ボリューム・値段共に魅力的だ

 

「すいませーん!2人いけますか?」

「あら~~ごめんね。今撮影中なのよ」

「なんの撮影ですか?」

「ご当地ヒーローのグルメリポートしててね」

店内のテーブルの上にはお目当の磯ラーメンセット

その前にはヒーローらしきレッドとブルーが座っている

「ごめんね。ヒーロー来てなかったらいけたんだけど、、、」

「わかりました。じゃぁ他いきますね」

 

 

昼食をヒーローに阻まれた僕たちは松乃屋食堂で

単品の磯ラーメンと瓶ビールを頼んだ

 

 

 

 

 

 

 

昼食を終え

「まさるくん!アイス食べようよ!」

とタケヤが小学生みたいな表情で言い出した

 

 

松乃屋食堂をでてヒーローのロケを横目にレストハウスに向かった

 

レストハウスの店内はガランとして

ピンクのエプロンをつけた店員さんが一人まったりとしている

どうやらコロナの影響はここまで届いているようだ

 

 

 

塩アイスを注文しベンチに座り頬張っていると

「どっからぎだの?」

と店員さんが話しかけてくれた

「みちのく潮風トレイルってハイキングコース歩いてるんですよ」

「あぁそのみつね。つらほら歩いでる人いてるね」

「今年何人か歩いてる人見かけました?」

「1週間前に一人みがげたっけな」

 

 

 

 

アイスも食べ終えそろそろ出ようかと思っていた矢先

「ビールでも飲んでいがない?」

あまりにも暇すぎるからか

もう少し私の相手しなさいよ!

と言わんばかりに姉さんは2本のビールを差し出している

 

トレイルマジックだ!!!!

2人のハイカーの口角は1cm太陽に近づいた

 

2人はもう一度ベンチに腰掛け

プシュッ!!

っと店の前でおっぱじめた

 

日差しの強い日中の空の下

エンジェルからもらったビールは

スルスルと体の中に流れ込んでいく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間後、、、

気がつけば缶ビール4本の空き缶が目の前に転がっている

そして、締めのコーヒーを飲み終えた

 

旅っていいな

 

そんなどうしようもないほろ酔いの大人2人が、平日の昼間からいい感じになっている

 

「旅っていいね」

「ですね」

 

 

 

 

さすがにそろそろ歩きたくなってきた

 

 

「ほんとビールもコーヒーもありがとうございました」

「いいのよいいのよ!あたすに付き合ってもらったんだがら」

 

 

何かお返しはできないものかと考え

歩き終えたらポストカードを書くことを約束して

名前と住所を聞いて姉さんとお別れした

 

 

旅の中で出会う人はなぜこんなにも優しくしてくれるのだろう?

旅をしている人は話しやす語りするのだろうか?

 

 

北山崎レストハウスをあとにした2人の酔っ払いが

上機嫌でトレイルに戻るころ

ご当地ヒーローもお仕事を終え

仮面を外しタバコを吸っていた

 

 

 

 

 

北山崎レストハウスを出て

北山漁港に着く頃には

ビールで摂取したアルコールは

汗となって毛穴から体の外へ逃げていた

 

 

日が傾き、時刻は3時を回っていただろうか

2人は田野畑の海沿いを歩いていた

 

この小さな半島を歩き終えると

明戸キャンプ場があるはずだ

 

「今日はそこでかな」

 

ここから明戸キャンプ場までは

僕がみちのく潮風トレイル全行程の中で

一二を争うスリリングなセクションとなった

 

 

 

 

タケヤが以前言っていた

「手彫りトンネル」

がそろそろでてくるらしい。

 

正直、その名前を聞いた時

「人の手で掘ったトンネルなんでしょ?」

ぐらいのテンションだった

 

数メートルの人の手で掘ったトンネルを通るだけのことに

尾ひれがついて言葉が一人歩きしてるだけだと思っていた

あまり期待しすぎても

後悔することになるだろう

 

 

「まぁただ手で掘ったトンネルだよ!」

 

一度歩いたことがあるタケヤがそう言っていることで

僕の考えは確信に近づいた

 

 

 

 

そんなテンションで歩みを進めると

断崖絶壁にぽっかりと穴が空いている

 

「あそこが手彫りトンネルだね」

「あぁこれね。確かに手彫りトンネルっすね」

 

想像通りの手彫りトンネルに

何も思わず足を踏み入れると

 

 

 

 

「あれ!このトンネルこんなに長かったかな?」

「確かに長いっすよね?」

 

 

トンネル内はひんやり冷たく光が全く入らない暗闇

どこからともなく波がぶつかる音が聞こえる

 

 

「タケさん!このトンネル意外とおもろいんちゃいます?」

「こんなだったかな?」

 

 

入り口に道標があったので道を間違っているわけはない

 

何分歩いただろう?

遠くに光が見え始めた

 

一歩一歩近づくトンネルの出口

出口の向こう側はホワイトホール現象によって

真っ白な光が見えるだけで景色は見えない

 

 

出口にたどり着こうという頃に

ようやく目が光に慣れて向こう側の景色が見えた

 

 

そこに広がる光景は

波の力でぶつかりあった丸い石が敷き詰められ

何十メートルもある断崖絶壁がそびえ立っている

崖の上に見える青空は

いつもよりも高く遠くにあるように見える

波で石が転がる音

泡立つ海水が弾ける音

 

まるで誰も知らない秘密の園のような光景が広がっていた

 

 

 

 

「タケさん!!ここすごいね!!」

「こんなだっけな?」

 

僕はここでタケヤの個性を忘れていたことに気づいた

そう、彼は1度歩いた道も初めて歩くことのように感じる人なのだ

 

言い換えれば

記憶力があまり良くないわけだ

 

 

 

 

 

そして、手彫りトンネルは1つではなくもう1つあることを知った

 

次のトンネルは

大きな岩を直下降した所にぽっかりと口を開けていた

 

 

そしてなぜかトンネルの中は濡れている

ヘッドライトをつけ先に進むと

濡れていた足場は水たまりに変わってくる

 

歩けば歩くほどその深さは増し

 

くるぶし

 

ふくらはぎ

 

ひざ

 

膝上

 

数日前の台風でトンネル内に海水が流れ込んできたのだ

いったいどこまで深くなるのだろう

鍾乳洞を探検している人はこんな気分なのかもしれない

 

 

 

 

「みちのくすごいね!!」

 

 

後ろでタケヤがそう叫んでいる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう彼は何も覚えていないのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回 みちのく潮風トレイル Episode3

タイトル「         」

お楽しみください!!

 

 

 

 

 

 

 

 

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3 Responses

  1. あなたの記事は非常に役に立ちました。この有用な情報をありがとう。

    • da80207
      | 返信

      この文章でお役になてましたかね笑 でもありがとうございます!!

  2. yogini
    | 返信

    面白い。
    次へGo笑。

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